編集後記

「主よ、それなら                                      
何に望みをかけたらよいのでしょう」(詩39:8)
ロンダニーニのピエタ  ミケランジェロ

撮影 雨宮 慧

ゼーヘル キリストの聖体号 編集後記より

▼ピエタとは、十字架から降ろされたイエスを聖母マリアやマグダラのマリアなどが悼み悲しむ情景を描いた絵画や彫刻を表すタイトルですが、ミケランジェロは生涯に四体のピエタを製作しています。
▼最も有名な「サン・ピエトロのピエタ」は二十代半ばの作品ですが、フィレンツェのドーモにある「フィレンツェのピエタ」は75歳ごろの作品と思われ、同じくフィレンツェのアカデミア美術館の「パレストリーナのピエタ」は81歳ごろ、ミラノの「ロンダニーニのピエタ」は89歳ごろの作品とされます。
▼晩年に彫ったこの三体は未完成のまま、世を去っています。そのことが関係しているのでしょうか、「サン・ピエトロのピエタ」では聖母マリアがイエスの遺体を軽々と抱えていますが、晩年の作品ではかろうじて支えているといった重い遺体として描かれています。
▼人は年齢を重ねるにつれ、肉の重みを意識しますが、彼にとってそれを支えるのは聖母マリアだったのでしょう。彼は幼年期に母親を失っており、母親と聖母マリアとが重なり合っていたことも考えられます。晩年の彼は、「のみも絵筆もこの胸をいやしてくれぬ…我らを抱きとめる神の愛のみ」と書いています。(雨宮)

BGM : Ach bleib bei uns, Herr Jesu Christ

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