編集後記

 

ゼーヘル 三位一体号 編集後記より

▼パドヴァで一泊した後、フィレンツェの修道会経営のホテルに四泊しました。フィレンツェを拠点にしてトスカーナ地方の町を巡り歩こうと考えたからです。上の写真はフィレンツェからアレッツォーに向かう途中、車窓から撮りました。
▼アレッツォーのサン・フランチェスコ教会にはピエロ・デッラ・フランチェスカが「聖十字架伝説」を題材として描いた一連のフレスコ画があります。「聖十字架伝説」とは、キリストが磔にされた十字架の木についての伝説で、エデンの園から始まり、7世紀の東ローマ皇帝ヘラクリウスの時代にまで及ぶ、荒唐無稽ともいえる物語のことです。
▼フランチェスカはそこから十の場面を取り出し、教会の内陣に描きました。ジョットが描いたスクロヴェーニ礼拝堂のフレスコ画は登場人物の感情を見事に描いていますが、フランチェスカは逆に感情を抑え、淡々と人物を描いています。
▼それにしても、14―15世紀にかけて、フィレンツェを中心とするトスカーナ地方にはジョットなど天才的な画家が輩出しました。その原因がどこにあるのか分かりませんが、中身の濃い時代であったのは確かです。 (雨宮)

フィレンツェからアレッツォーへ向かう車窓で
(撮影 雨宮)

BGM : Sarabande by VISEE, Robert de

 Close