1555

dikaios
  ディカイオス
      正しい

C・年間・24


(1)人に使われ、「正しい、公正な、正義の」(ヘブライ語のツァディークのように、「神と人の法に従っていること」であり、ギリシャ・ローマ世界では模範的市民に用いられる)
(α)法的側面が強調されて、
(a)律法は律法を守る人のためにあるのではない
▼1テモ一9 すなわち、次のことを知って用いれば良いものです。律法は、【正しい者】のために与えられているのではなく、不法な者や不従順な者、不信心な者や罪を犯す者、神を畏れぬ者や俗悪な者、父を殺す者や母を殺す者、人を殺す者、 
(b)ヨセフは「公正な、正直な、善良な人」(「慈悲深い」の意味かもしれない)
▼マタ一19 夫ヨセフは【正しい人】であったので、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに縁を切ろうと決心した。 
(c)神から任命された管理者である監督が
▼テト一8 かえって、客を親切にもてなし、善を愛し、分別があり、【正しく】、清く、自分を制し、
(d)一般的定義で、「正しい事(義)を行う者は正しい」
▼1ヨハ三7 子たちよ、だれにも惑わされないようにしなさい。義を行う者は、御子と同じように、【正しい人】です。
     注|「ディカイオス」の使用は二回。一回は訳出されていない。(直訳「[義を行う者は、あの方が]正しい方[であると同じように]、正しい人[です。]」)
▽黙二二11 不正を行う者には、なお不正を行わせ、汚れた者は、なお汚れるままにしておけ。【正しい者】には、なお正しいことを行わせ、聖なる者は、なお聖なる者とならせよ。
(e)その他の用例
▼ロマ五7 【正しい人】のために死ぬ者はほとんどいません。善い人のために命を惜しまない者ならいるかもしれません。
(β)宗教的側面が強調されて、すなわち、神の主権に背かず、神の律法を守ること
(a)神から見て「正しい人」
[否定語と共に]
▼ロマ三10 次のように書いてあるとおりです。「【正しい者】はいない。一人もいない。
[前置詞パラ〈前で〉を伴って]
▼ロマ二13 律法を聞く者が神の前で【正しい】のではなく、これを実行する者が、義とされるからです。 
[準前置詞エナンティオン〈前で〉を伴って]
▼ルカ一6 二人とも神の前に【正しい人】で、主の掟と定めをすべて守り、非のうちどころがなかった。
(b)神を畏れ、信仰に篤い「正しい人」
[コルネリウス]
▼使十22 すると、彼らは言った。「百人隊長のコルネリウスは、【正しい】人で神を畏れ、すべてのユダヤ人に評判の良い人ですが、あなたを家に招いて話を聞くようにと、聖なる天使からお告げを受けたのです。」
[シメオン]
▼ルカ二25 そのとき、エルサレムにシメオンという人がいた。この人は【正しい人】で信仰があつく、イスラエルの慰められるのを待ち望み、聖霊が彼にとどまっていた。 
[議員ヨセフ]
▼ルカ二三50 さて、ヨセフという議員がいたが、善良な【正しい】人で、
(c)数形で使われ、特にユダヤ教的・キリスト教的な意味での「正しい人々、義人」を意味する
▼マタ一三43 そのとき、【正しい人々】はその父の国で太陽のように輝く。耳のある者は聞きなさい。」
▼ルカ一17 彼はエリヤの霊と力で主に先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に【正しい人】の分別を持たせて、準備のできた民を主のために用意する。」
▼1ペト三12 主の目は【正しい者】に注がれ、主の耳は彼らの祈りに傾けられる。主の顔は悪事を働く者に対して向けられる。」
[そう見えるだけの人]
▼マタ二三28 このようにあなたたちも、外側は人に【正しい】ように見えながら、内側は偽善と不法で満ちている。
▼ルカ二〇20 そこで、機会をねらっていた彼らは、【正しい人】を装う回し者を遣わし、イエスの言葉じりをとらえ、総督の支配と権力にイエスを渡そうとした。
(d)特にキリスト信者を指して
▼マタ十41 預言者を預言者として受け入れる人は、預言者と同じ報いを受け、【正しい者】を【正しい者】として受け入れる人は、【正しい者】と同じ報いを受ける。
▼1ペト四18 「【正しい人】がやっと救われるのなら、不信心な人や罪深い人はどうなるのか」と言われているとおりです。
(e)特に旧約聖書の義人を指して
[預言者と共に]
▼マタ一三17 はっきり言っておく。多くの預言者や【正しい人たち】は、あなたがたが見ているものを見たがったが、見ることができず、あなたがたが聞いているものを聞きたがったが、聞けなかったのである。」
▼マタ二三29 律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。預言者の墓を建てたり、【正しい人】の記念碑を飾ったりしているからだ。      (「教師」の意味かもしれない)
[アベル]
▼マタ二三35 こうして、【正しい人】アベルの血から、あなたたちが聖所と祭壇の間で殺したバラキアの子ゼカルヤの血に至るまで、地上に流された【正しい人】の血はすべて、あなたたちにふりかかってくる。
▼ヘブ一一4 信仰によって、アベルはカインより優れたいけにえを神に献げ、その信仰によって、【正しい者】であると証明されました。神が彼の献げ物を認められたからです。アベルは死にましたが、信仰によってまだ語っています。
[ロト]
▼2ペト二7 しかし神は、不道徳な者たちのみだらな言動によって悩まされていた【正しい人】ロトを、助け出されました。
(f)洗礼者ヨハネが
▼マコ六20 なぜなら、ヘロデが、ヨハネは【正しい】聖なる人であることを知って、彼を恐れ、保護し、また、その教えを聞いて非常に当惑しながらも、なお喜んで耳を傾けていたからである。 
(g)完成された(すなわち、死んだ)「正しい人々」
▼ヘブ一二23 天に登録されている長子たちの集会、すべての人の審判者である神、完全なものとされた【正しい人たち】の霊、 
(h)以下の語の反意語として
[正しくない人々]
▼マタ五45 あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、【正しい者】にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。 
▼使二四15 更に、【正しい者】も正しくない者もやがて復活するという希望を、神に対して抱いています。この希望は、この人たち自身も同じように抱いております。
▼1ペト三18 キリストも、罪のためにただ一度苦しまれました。【正しい方】が、正しくない者たちのために苦しまれたのです。あなたがたを神のもとへ導くためです。キリストは、肉では死に渡されましたが、霊では生きる者とされたのです。 
[罪人]
▼マタ九13 『わたしが求めるのは憐れみであって、いけにえではない』とはどういう意味か、行って学びなさい。わたしが来たのは、【正しい人】を招くためではなく、罪人を招くためである。」
▼マコ二17 イエスはこれを聞いて言われた。「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、【正しい人】を招くためではなく、罪人を招くためである。」
▼ルカ五32 わたしが来たのは、【正しい人】を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである。」
▼ルカ一五7 言っておくが、このように、悔い改める一人の罪人については、悔い改める必要のない九十九人の【正しい人】についてよりも大きな喜びが天にある。」
[罪人と不敬虔な者]
▼1テモ一9 すなわち、次のことを知って用いれば良いものです。律法は、【正しい者】のために与えられているのではなく、不法な者や不従順な者、不信心な者や罪を犯す者、神を畏れぬ者や俗悪な者、父を殺す者や母を殺す者、人を殺す者、
                  ((1)(α)(a)を参照)
▼1ペト四18 「【正しい人】がやっと救われるのなら、不信心な人や罪深い人はどうなるのか」と言われているとおりです。    ((1)(β)(d)を参照)
[悪い者たち]
▼マタ一三49 世の終わりにもそうなる。天使たちが来て、【正しい人々】の中にいる悪い者どもをより分け、
(i)最後の審判に関係して、試みに耐える人々は「正しい」
▼マタ二五37 すると、【正しい人たち】が王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられるのを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。
▼マタ二五46 こうして、この者どもは永遠の罰を受け、【正しい人たち】は永遠の命にあずかるのである。」 
(j)信仰によって生きる「正しい者」
▼ロマ一17 福音には、神の義が啓示されていますが、それは、初めから終わりまで信仰を通して実現されるのです。「【正しい者】は信仰によって生きる」と書いてあるとおりです。
▼ガラ三11 律法によってはだれも神の御前で義とされないことは、明らかです。なぜなら、「【正しい者】は信仰によって生きる」からです。
▼ヘブ十38 わたしの【正しい者】は信仰によって生きる。もしひるむようなことがあれば、その者はわたしの心に適わない。」
▼ロマ五19 一人の人の不従順によって多くの人が罪人とされたように、一人の従順によって多くの人が【正しい者】とされるのです。 
(k)正しい人の復活
▼ルカ一四14 そうすれば、その人たちはお返しができないから、あなたは幸いだ。【正しい者たち】が復活するとき、あなたは報われる。」
(l)正しい人の祈り
▼ヤコ五16 だから、主にいやしていただくために、罪を告白し合い、互いのために祈りなさい。【正しい人】の祈りは、大きな力があり、効果をもたらします。

(2)神に使われ、「公正な、正しい」(人や諸国への裁きに関係して)
(a)神は「正しい」裁き手
▼2テモ四8 今や、義の栄冠を受けるばかりです。【正しい】審判者である主が、かの日にそれをわたしに授けてくださるのです。しかし、わたしだけでなく、主が来られるのをひたすら待ち望む人には、だれにでも授けてくださいます。
(b)神は「正しい」父
▼ヨハ一七25 【正しい】父よ、世はあなたを知りませんが、わたしはあなたを知っており、この人々はあなたがわたしを遣わされたことを知っています。
▽ロマ三26 このように神は忍耐してこられたが、今この時に義を示されたのは、御自分が【正しい方】であることを明らかにし、イエスを信じる者を義となさるためです。 
[[聖なる」と共に]
▼黙一六5 そのとき、わたしは水をつかさどる天使がこう言うのを聞いた。「今おられ、かつておられた聖なる方、あなたは【正しい方】です。このような裁きをしてくださったからです。 
[「真実な」と共に]
▼1ヨハ一9 自分の罪を公に言い表すなら、神は真実で【正しい方】ですから、罪を赦し、あらゆる不義からわたしたちを清めてくださいます。

(3)イエスに使われる((1)と(2)の意味での「正しさ」の理想として、イエスは端的に「正しい人」と呼ばれる)
▼使七52 いったい、あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、一人でもいたでしょうか。彼らは、【正しい方】が来られることを預言した人々を殺しました。そして今や、あなたがたがその方を裏切る者、殺す者となった。
▼マタ二七19 一方、ピラトが裁判の席に着いているときに、妻から伝言があった。「あの【正しい人】に関係しないでください。その人のことで、わたしは昨夜、夢で随分苦しめられました。」
▼1ヨハ二1 わたしの子たちよ、これらのことを書くのは、あなたがたが罪を犯さないようになるためです。たとえ罪を犯しても、御父のもとに弁護者、【正しい方】、イエス・キリストがおられます。
▼1ヨハ三7 子たちよ、だれにも惑わされないようにしなさい。義を行う者は、御子と同じように、【正しい人】です。      ((1)(α)(d)を参照)
  注ー「ディカイオス」の使用は二回。一回は訳出されていない。(直訳「[義を行う者は、あの方が]正しい方[であると同じように]、正しい人[です。]」)  
▼ルカ二三47 百人隊長はこの出来事を見て、「本当に、この人は【正しい人】だった」と言って、神を賛美した。
  「正しい」の意味が狭められた結果、「罪のない」の意味に近づいている。(4)に述べられる「正しい人の血」を参照。
[「聖なる」と共に]
▼使三14 聖なる【正しい方】を拒んで、人殺しの男を赦すように要求したのです。

(4)事物が
(a)行いが「正しい」
▼1ヨハ三12 カインのようになってはなりません。彼は悪い者に属して、兄弟を殺しました。なぜ殺したのか。自分の行いが悪く、兄弟の行いが【正し】かったからです。
(b)「正しい」血
▼マタ二三35 こうして、【正しい人】アベルの血から、あなたたちが聖所と祭壇の間で殺したバラキアの子ゼカルヤの血に至るまで、地上に流された【正しい人】の血はすべて、あなたたちにふりかかってくる。
      ((1)(β)(e)、また上記(3)のルカ二三47を参照)
(c)「正しい」心
▼2ペト二8 なぜなら、この【正しい人】は、彼らの中で生活していたとき、毎日よこしまな行為を見聞きして【正しい】心を痛めていたからです。
(d)戒めが「正しい」
▼ロマ七12 こういうわけで、律法は聖なるものであり、掟も聖であり、【正しく】、そして善いものなのです。
(e)裁きが「正しい」
▼ヨハ五30 わたしは自分では何もできない。ただ、父から聞くままに裁く。わたしの裁きは【正しい】。わたしは自分の意志ではなく、わたしをお遣わしになった方の御心を行おうとするからである。」
▼ヨハ七24 うわべだけで裁くのをやめ、【正しい】裁きをしなさい。」
▼2テサ一5 これは、あなたがたを神の国にふさわしい者とする、神の判定が【正しい】という証拠です。あなたがたも、神の国のために苦しみを受けているのです。 
[複数形で]
▼黙一六7 わたしはまた、祭壇がこう言うのを聞いた。「然り、全能者である神、主よ、あなたの裁きは真実で【正しい】。」
▼黙一九2 その裁きは真実で【正しい】からである。みだらな行いで地上を堕落させたあの大淫婦を裁き、御自分の僕たちの流した血の復讐を、彼女になさったからである。」
(f)道が「正しい」
▼黙一五3 彼らは、神の僕モーセの歌と小羊の歌とをうたった。「全能者である神、主よ、あなたの業は偉大で、驚くべきもの。諸国の民の王よ、あなたの道は【正しく】、また、真実なもの。

(5)中性形で、正義の必然的な要求のゆえに義務となるものを示す
(a)神から見て「正しいこと」
  [前置詞パラ〈前で〉を伴って]
▼2テサ一6 神は【正しいこと】を行われます。あなたがたを苦しめている者には、苦しみをもって報い、 [準前置詞エノーピオン〈前で〉を伴って]
▼使四19 しかし、ペトロとヨハネは答えた。「神に従わないであなたがたに従うことが、神の前に【正しい】かどうか、考えてください。 
(b)複数形で
▼フィリ四8 終わりに、兄弟たち、すべて真実なこと、すべて気高いこと、すべて【正しいこと】、すべて清いこと、すべて愛すべきこと、すべて名誉なことを、また、徳や称賛に値することがあれば、それを心に留めなさい。 
(c)動詞エイミ〈ある〉と共に
▼エフェ六1 子供たち、主に結ばれている者として両親に従いなさい。それは【正しいこと】です。 
[不定法を伴って]
▼フィリ一7 わたしがあなたがた一同についてこのように考えるのは、【当然】です。というのは、監禁されているときも、福音を弁明し立証するときも、あなたがた一同のことを、共に恵みにあずかる者と思って、心に留めているからです。 
(d)動詞ヘーゲオマイ〈考える〉と共に
▼2ペト一13 わたしは、自分がこの体を仮の宿としている間、あなたがたにこれらのことを思い出させて、奮起させる【べき】だと考えています。 
(e)動詞クーリノー〈裁く・判断する〉と共に
▼ルカ一二57 「あなたがたは、何が【正しい】かを、どうして自分で判断しないのか。
(f)動詞パレコー〈差し出す〉と共に
▼コロ四1 主人たち、奴隷を【正しく】、公平に扱いなさい。知ってのとおり、あなたがたにも主人が天におられるのです。
      (直訳「[奴隷に]正しいもの[と公平を差し出しなさい]」)
(g)動詞エイミ〈である〉の接続法と共に
▼マタ二〇4 『あなたたちもぶどう園に行きなさい。【ふさわしい賃金】を払ってやろう』と言った。
(直訳「ふさわしい[ものは何でも]」)

[バウワーが分類していない用例]
◆ルカ一八9 自分は【正しい人間】だとうぬぼれて、他人を見下している人々に対しても、イエスは次のたとえを話された。
◆使二二14 アナニアは言いました。『わたしたちの先祖の神が、あなたをお選びになった。それは、御心を悟らせ、あの【正しい方】に会わせて、その口からの声を聞かせるためです。
◆ヤコ五6 【正しい人】を罪に定めて、殺した。その人は、あなたがたに抵抗していません。
◆1ヨハ二29 あなたがたは、御子が【正しい方】だと知っているなら、義を行う者も皆、神から生まれていることが分かるはずです。