1987

elpis
  エルピス
     望み・希望

C・諸聖人


望み・希望・期待
(1)一般に、「希望、見込み、期待」
(a)次の前置詞に付属して
[前置詞エピ〈に基づいて〉+与格形]
▼1コリ九10a それとも、わたしたちのために言っておられるのでしょうか。もちろん、わたしたちのためにそう書かれているのです。耕す者が【望み】を持って耕し、脱穀する者が分け前にあずかることを【期待】して働くのは当然です。
[前置詞パラ〈に反して〉+対格形]
▼ロマ四18a 彼は【希望】するすべもなかったときに、なおも【望み】を抱いて、信じ、「あなたの子孫はこのようになる」と言われていたとおりに、多くの民の父となりました。
(b)目的語的属格を伴って
[名詞エルガシアー〈儲け〉の属格]
▼使一六19 ところが、この女の主人たちは、金もうけの【望み】がなくなってしまったことを知り、パウロとシラスを捕らえ、役人に引き渡すために広場へ引き立てて行った。
[名詞メタノイア〈回心〉の属格]
▼イグナティオスの手紙
       エフェソのキリスト者へ十1
▼ヘルマスの牧者第六のたとえ 二4
▼ヘルマスの牧者第八のたとえ 七2
▼ヘルマスの牧者第八のたとえ 十2
(c)属格の冠詞が付いた不定法が続いて
[動詞ソーゾー〈救う)の受動不定法]
▼使二七20 幾日もの間、太陽も星も見えず、暴風が激しく吹きすさぶので、ついに助かる【望み】は全く消えうせようとしていた。
[動詞メテコー〈分け前にあずかる)の不定法]
▼1コリ九10b それとも、わたしたちのために言っておられるのでしょうか。もちろん、わたしたちのためにそう書かれているのです。耕す者が【望み】を持って耕し、脱穀する者が分け前にあずかることを【期待】して働くのは当然です。
(d)次の動詞と共に
[動詞エコー〈持つ〉」と共に、「希望を持つ」]
▼ヘルマスの牧者第八のたとえ 六5
[動詞ソーゾー〈救う〉の受動態と共に、「(現実にではなく)希望において救われた」
▼ロマ八24a わたしたちは、このような【希望によって】救われているのです。見えるものに対する【希望】は【希望】ではありません。現に見ているものをだれがなお望むでしょうか。
  注― 「希望によって」は与格形
(e)形容詞ベバイオス〈堅固な〉と共に、「(あなたがたに対する)希望は揺るがない」
▼2コリ一7 あなたがたについてわたしたちが抱いている【希望】は揺るぎません。なぜなら、あなたがたが苦しみを共にしてくれているように、慰めをも共にしていると、わたしたちは知っているからです。
  (コリントの信徒がかつてのように将来も苦難を耐え忍ぶようにと、パウロは希望している)
(f)(ユダヤ人たちが神殿に置いた)望み(は虚しい)
▼バルナバの手紙 一六2

(2)特に、この世ならざるものや超自然的な事柄に関する、神の約束に基づいた「希望」
(α)キリスト者の希望とは特別な関係を持たずに
(a)前置詞エピの後で与格形で、「希望に基づいて」
▼ロマ八20 被造物は虚無に服していますが、それは、自分の意志によるものではなく、服従させた方の意志によるものであり、同時に【希望】も持っています。
▽テト一2 これは永遠の命の【希望】に基づくもので、偽ることのない神は、永遠の昔にこの命を約束してくださいました。
▼ロマ四18b 彼は【希望】するすべもなかったときに、なおも【望み】を抱いて、信じ、「あなたの子孫はこのようになる」と言われていたとおりに、多くの民の父となりました。
▼使二26 だから、わたしの心は楽しみ、
舌は喜びたたえる。
体も【希望】のうちに生きるであろう。
  (ただし、これは詩一五[一六]9からの引用であり、一クレメンス五七7と同じく、旧約聖書の語法に従って「心配なく、安心して」の意味とみることもできる)
▼1クレメンス 五七7
(b)ユダヤ人たちのメシア待望を表して
▼使二三6 パウロは、議員の一部がサドカイ派、一部がファリサイ派であることを知って、議場で声を高めて言った。「兄弟たち、わたしは生まれながらのファリサイ派です。死者が復活するという【望みを抱いている】ことで、わたしは裁判にかけられているのです。」
▼使二六6 今、私がここに立って裁判を受けているのは、神が私たちの先祖にお与えになった約束の実現に、【望みをかけている】からです。
▼使二八20 だからこそ、お会いして話し合いたいと、あなたがたにお願いしたのです。イスラエルが【希望していること】のために、わたしはこのように鎖でつながれているのです。」
(c)真の知識と命との関係をたとえたたとえの中で、「実を期待し、希望に基づいて植える」
▼ディオグネートスへの手紙 一二6
(β)キリスト者の希望を表して
(a)修飾語を持たずに単独で
▼ロマ五4 忍耐は練達を、練達は【希望】を生むということを。
▼ロマ五5 【希望】はわたしたちを欺くことがありません。わたしたちに与えられた聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからです。
▼ロマ一二12 【希望をもって】喜び、苦難を耐え忍び、たゆまず祈りなさい。
  注― 与格形
▼ロマ一五13b 【希望の源である】神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たし、聖霊の力によって【希望】に満ちあふれさせてくださるように。
▼1コリ一三13 それゆえ、信仰と、【希望】と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。
▽ポリュカルポスの手紙 三3
▼ヘブ三6 キリストは御子として神の家を忠実に治められるのです。もし確信と【希望に満ちた】誇りとを持ち続けるならば、わたしたちこそ神の家なのです。
  注― 属格形
▼ヘブ六11 わたしたちは、あなたがたおのおのが最後まで【希望】を持ち続けるために、同じ熱心さを示してもらいたいと思います。
▼ヘブ十23 約束してくださったのは真実な方なのですから、公に言い表した【希望】を揺るがぬようしっかり保ちましょう。
▼1ペト三15 心の中でキリストを主とあがめなさい。あなたがたの抱いている【希望】について説明を要求する人には、いつでも弁明できるように備えていなさい。
▼アグラファ 7
▼2クレメンス 一七7
▼イグナティオスの手紙
       エフェソのキリスト者へ 一2
▼イグナティオスの手紙
       マグネシアのキリスト者へ 七1
(b)死者の復活に対する希望に
▼1クレメンス 二七1
(c)次のような形容詞を伴って
[形容詞アガソス〈善い]
▼2テサ二16 わたしたちの主イエス・キリスト御自身、ならびに、わたしたちを愛して、永遠の慰めと確かな【希望】とを恵みによって与えてくださる、わたしたちの父である神が、
[形容詞クレイットーン〈いっそう優れた〉]
▼ヘブ七19 律法が何一つ完全なものにしなかったからです―|しかし、他方では、もっと優れた【希望】がもたらされました。わたしたちは、この希望によって神に近づくのです。
  注― 使用一回。後者は関係代名詞
[動詞ザオー〈生きる〉の現在分詞]
▼1ペト一3 わたしたちの主イエス・キリストの父である神が、ほめたたえられますように。神は豊かな憐れみにより、わたしたちを新たに生まれさせ、死者の中からのイエス・キリストの復活によって、生き生きとした【希望】を与え
▽バルナバの手紙 一一8
(d)次のような名詞に属格で付属して
[名詞コイノン〈共通〉]
▼1クレメンス五一1
▽イグナティオスの手紙
       フィラデルフィアのキリスト者へ五2
[名詞カイノテース〈新しさ〉]
▼イグナティオスの手紙
       マグネシアのキリスト者へ九1
(e)主語的属格を伴って
[私の希望]
▼フィリ一20 そして、どんなことにも恥をかかず、これまでのように今も、生きるにも死ぬにも、わたしの身によってキリストが公然とあがめられるようにと切に願い、【希望】しています。
[選ばれた者の希望]
▼1クレメンス 五八2
▽1クレメンス 五七2
(f)目的語的属格を伴って、希望の対象が示され、
[名詞エパンゲリアー〈約束〉の属格形]
▼使二六6 今、私がここに立って裁判を受けているのは、神が私たちの先祖にお与えになった約束の実現に、【望みをかけている】からです。
  ((2)(α)(b)を参照)
▽使二六7 私たちの十二部族は、夜も昼も熱心に神に仕え、その約束の実現されることを望んでいます。王よ、私はこの【希望を抱いている】ために、ユダヤ人から訴えられているのです。
[名詞ゾーエー〈命〉の属格形]
▼テト一2 これは永遠の命の【希望】に基づくもので、偽ることのない神は、永遠の昔にこの命を約束してくださいました。 (αを参照)
▼テト三7 こうしてわたしたちは、キリストの恵みによって義とされ、【希望】どおり永遠の命を受け継ぐ者とされたのです。
▽バルナバの手紙 一4
▽バルナバの手紙 一6
▽ヘルマスの牧者第九のたとえ 二六2
[名詞ドクサ〈栄光〉の属格形]
▼ロマ五2 このキリストのお陰で、今の恵みに信仰によって導き入れられ、神の栄光にあずかる【希望】を誇りにしています。
▽コロ一27 この秘められた計画が異邦人にとってどれほど栄光に満ちたものであるかを、神は彼らに知らせようとされました。その計画とは、あなたがたの内におられるキリスト、栄光の【希望】です。
[名詞ソーテーリアー〈救い〉の属格形]
▼1テサ五8 しかし、わたしたちは昼に属していますから、信仰と愛を胸当てとして着け、救いの【希望】を兜としてかぶり、身を慎んでいましょう。
▼2クレメンス 一7
[名詞ディカイオシュネー〈義〉の属格形]
▼ガラ五5 わたしたちは、義とされた者の【希望】が実現することを、″霊″により、信仰に基づいて切に待ち望んでいるのです。
[名詞キューリオス〈主〉の属格形]
▼1テサ一3 あなたがたが信仰によって働き、愛のために労苦し、また、わたしたちの主イエス・キリストに対する、【希望を持って】忍耐していることを、わたしたちは絶えず父である神の御前で心に留めているのです。
(g)付属する名詞の属格が、希望のよりどころを示すこともある
[名詞エウアンゲリオン〈福音〉の属格を伴って、「福音に基づく希望」]
▼コロ一23 ただ、揺るぐことなく信仰に踏みとどまり、あなたがたが聞いた福音の【希望】から離れてはなりません。この福音は、世界中至るところの人々に宣べ伝えられており、わたしパウロは、それに仕える者とされました。
[名詞クレーシス〈招き〉の属格を伴って、「神の招きと共に与えられた希望」]
▼エフェ一18 心の目を開いてくださるように。そして、神の招きによってどのような【希望】が与えられているか、聖なる者たちの受け継ぐものがどれほど豊かな栄光に輝いているか悟らせてくださるように。
▼エフェ四4 体は一つ、霊は一つです。それは、あなたがたが、一つの【希望】にあずかるようにと招かれているのと同じです。
[名詞ピスティス〈信仰〉の属格を伴って、「信仰が与える希望」]
▼バルナバの手紙 四8
(h)名詞セオス〈神〉に属格形で付属して、「希望の神」
▼ロマ一五13a 【希望の源である】神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たし、聖霊の力によって【希望】に満ちあふれさせてくださるように。
(i)希望の対象・根拠が次の前置詞句で示されて
[前置詞エイス〈に対する〉+名詞セオス〈神〉]
▼1ペト一21 あなたがたは、キリストを死者の中から復活させて栄光をお与えになった神を、キリストによって信じています。従って、あなたがたの信仰と【希望】とは神にかかっているのです。
[前置詞エイス+名詞イエースース〈イエス〉]
▼バルナバの手紙 一一11
[前置詞エピ〈の上に〉+名詞リソス〈石〉]
▼バルナバの手紙 六3
(j)次の動詞の目的語として対格形で
[動詞エコー〈持つ〉で、「希望を持つ」]
▼ロマ一五4 かつて書かれた事柄は、すべてわたしたちを教え導くためのものです。それでわたしたちは、聖書から忍耐と慰めを学んで【希望】を持ち続けることができるのです。
▼2コリ三12 このような【希望】を抱いているので、わたしたちは確信に満ちあふれてふるまっており、
▼エフェ二12 また、そのころは、キリストとかかわりなく、イスラエルの民に属さず、約束を含む契約と関係なく、この世の中で【希望】を持たず、神を知らずに生きていました。
▼1テサ四13 兄弟たち、既に眠りについた人たちについては、【希望】を持たないほかの人々のように嘆き悲しまないために、ぜひ次のことを知っておいてほしい。
▼ヘルマスの牧者第三の幻 一一3
▼ヘルマスの牧者第九のたとえ 一四3
▼ヘルマスの牧者第一の幻 一9
[動詞アッポリューミ〈失う〉で、「希望を失う」]
▼ヘルマスの牧者第五のいましめ 一7
(k)希望の拠り所となる人物を次の前置詞句で示し、
[前置詞エピ〈の上に〉+人物の与格]
▼1ヨハ三3 御子にこの【望み】をかけている人は皆、御子が清いように、自分を清めます。
[前置詞エイス〈対して〉+人物の対格]
▼使二四15(異読「前置詞プロス+人物の対格」) 更に、正しい者も正しくない者もやがて復活するという【希望】を、神に対して抱いています。この希望は、この人たち自身も同じように抱いております。
  注― 使用一回。後者は関係代名詞
(l)希望の対象が次の手段で示されて
[不定法によって]
▼2コリ十15 わたしたちは、他人の労苦の結果を限度を超えて誇るようなことはしません。ただ、わたしたちが【希望】しているのは、あなたがたの信仰が成長し、あなたがたの間でわたしたちの働きが定められた範囲内でますます増大すること、
▼使二四15 更に、正しい者も正しくない者もやがて復活するという【希望】を、神に対して抱いています。この希望は、この人たち自身も同じように抱いております。
     注― (k)を見よ。使用一回。後者は関係代名詞
[接続詞ホティ節によって]
▼ロマ八20 被造物は虚無に服していますが、それは、自分の意志によるものではなく、服従させた方の意志によるものであり、同時に【希望】も持っています。
  注― ホティは21節。(2)(α)(a)を参照
▼フィリ一20 そして、どんなことにも恥をかかず、これまでのように今も、生きるにも死ぬにも、わたしの身によってキリストが公然とあがめられるようにと切に願い、【希望】しています。((2)(β)(e)を参照)

(3)ある人が希望をかけている人物がエルピスと呼ばれ、「希望(の対象)」
(a)教会共同体に使われて
▼1テサ二19 わたしたちの主イエスが来られるとき、その御前でいったいあなたがた以外のだれが、わたしたちの【希望】、喜び、そして誇るべき冠でしょうか。
(b)キリストに使われて
▼1テモ一1 わたしたちの救い主である神とわたしたちの【希望である】キリスト・イエスによって任命され、キリスト・イエスの使徒となったパウロから、
▽コロ一27 この秘められた計画が異邦人にとってどれほど栄光に満ちたものであるかを、神は彼らに知らせようとされました。その計画とは、あなたがたの内におられるキリスト、栄光の【希望】です。
▽イグナティオスの手紙
       エフェソのキリスト者へ 二一2
▽イグナティオスの手紙
      フィラデルフィアのキリスト者へ 一一2
▽イグナティオスの手紙
       マグネシアのキリスト者へ 一一
▽イグナティオスの手紙
       スミルナのキリスト者へ 十2
▽イグナティオスの手紙
       トラレスのキリスト者へ題辞 二2
▽ポリュカルポスの手紙 八1

(4)希望する事柄を表して、「希望(材料)」
(a)「希望(材料)が目に見えているとき、もはや希望ではない」
▼ロマ八24b わたしたちは、このような【希望によって】救われているのです。見えるものに対する【希望】は【希望】ではありません。現に見ているものをだれがなお望むでしょうか。
(b)「あなたがたのために天に置かれている希望」
▼コロ一5 それは、あなたがたのために天に蓄えられている【希望】に基づくものであり、あなたがたは既にこの希望を、福音という真理の言葉を通して聞きました。
  注― 使用一回。後者は関係代名詞
(c)「祝福された希望を待ち望む」
▼テト二13 また、祝福に満ちた【希望】、すなわち偉大なる神であり、わたしたちの救い主であるイエス・キリストの栄光の現れを待ち望むように教えています。
(d)「目前にある希望」
▼ヘブ六18 それは、目指す【希望】を持ち続けようとして世を逃れて来たわたしたちが、二つの不変の事柄によって力強く励まされるためです。この事柄に関して、神が偽ることはありえません。