A年四旬第2主日
祝福の源となるようにキリストは死を滅ぼし姿が彼らの目の前で変わった

第一朗読
創世記 12章1―4a節

1 主はアブラムに言われた。
   「あなたは生まれ故郷
   父の家を離れて
   わたしが示す地に行きなさい。
2 わたしはあなたを大いなる国民にし
   あなたを祝福し、あなたの名を高める
   祝福の源となるように
3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し
   あなたを呪う者をわたしは呪う。
   地上の氏族はすべて
   あなたによって祝福に入る。」
4a アブラムは、主の言葉に従って旅立った。
第一朗読 
創世記 12章1―4a節

 親族・モーレデト

 1節の「あなたの生まれ故郷、父の家を離れて」を直訳すると、「あなたの地から、あなたの<親族>から、あなたの父の家から(離れて)」となります。傍線部の「親族」が名詞モーレデトですが、この語は動詞ヤーラド〈生む〉からの派生語ですから、語義は「生まれが一緒の者=親族」、あるいは「誕生の地=故郷」であると思われます。
 創11:28「ハランは……故郷カルデアのウルで死んだ」を直訳すると、「ハランは……彼の<モーレデト>の地、カルデアのウルで死んだ」となります。ここでのモーレデトが「親族」でも、「故郷」でも意味は通じます。しかし、ヨセフの子供のうちエフライムとマナセは父ヤコブの子供とされ、それ以外の「モーレデト」はヨセフの子供とされる、と述べる創48:6では「故郷」の意味は不可能です。
 今週の朗読での語義は確かに微妙ですが、「親族」の意味に取るのが良いと思われます。そうであれば、広い概念の「あなたの地」から「あなたの親族」を経て、最も狭い「あなたの父の家」へと絞り込まれていることになります。
 

 

第二朗読
テモテへの手紙U 1章8b―10節

8b むしろ、神の力に支えられて、福音のためにわたしと共に苦しみを忍んでください。
9 神がわたしたちを救い、聖なる招きによって呼び出してくださったのは、わたしたちの行いによるのではなく、御自身の計画と恵みによるのです。この恵みは、永遠の昔にキリスト・イエスにおいてわたしたちのために与えられ、
10 今や、わたしたちの救い主キリスト・イエスの出現によって明らかにされたものです。キリストは死を滅ぼし、福音を通して不滅のを現してくださいました。
第二朗読 
テモテへの手紙U 1章8b―10節

 命・ゾーエー

 動詞ザオー〈生きる〉の名詞形であり、まず、自然の「生命」を意味します。人の「命」は財産によってどうすることもできず(ルカ12:15)、自分の「命」がどうなるかは人間にはわかりません(ヤコ4:14)。すべての人に「命」を与えるのは神だからです(使17:25)。
 次に、神やキリストが持っている超自然的な「」を意味します。神が死者の中から復活させたキリストは「命」への導き手であり(使3:15)、人が洗礼によってキリストの死にあずかるのは、新しい「命」に生きるためです(ロマ6:4)。
 一般的には、永遠の「命」は後の世で受ける終末の救いを指します(マコ10:30並行)。しかし、ヨハネは、御子を信じる人が得る救いを永遠の「命」と呼びます(ヨハ3:36)。
 今週の朗読では、キリストは不滅の「命」を照らし出すと述べられています。これを人が得ることができるのは、魂が不滅であるからではなく、死者をよみがえらせる神からの贈り物だからです。不滅の命にあずかることが確実であるから、人はこの世の命を神の意志に従って生きることができます。
 

 

今週の福音
マタイによる福音書 17章1―9節

1 六日の後、イエスは、ペトロ、それにヤコブとその兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。
2 イエスの姿が彼らの目の前で変わり、顔は太陽のように輝き、服は光のように白くなった。
3 見ると、モーセとエリヤが現れ、イエスと語り合っていた。
4 ペトロが口をはさんでイエスに言った。「主よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。お望みでしたら、わたしがここに仮小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのため、一つはモーセのため、もう一つはエリヤのためです。」
5 ペトロがこう話しているうちに、光り輝く雲が彼らを覆った。すると、「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者。これに聞け」という声が雲の中から聞こえた。
6 弟子たちはこれを聞いてひれ伏し、非常に恐れた。
7 イエスは近づき、彼らに手を触れて言われた。「起きなさい。恐れることはない。」
8 彼らが顔を上げて見ると、イエスのほかにはだれもいなかった。
9 一同が山を下りるとき、イエスは、「人の子が死者の中から復活するまで、今見たことをだれにも話してはならない」と弟子たちに命じられた。
今週の福音 
マタイによる福音書 17章1―9節

 仮小屋・スケーネー

 この語は、まずは@「遊牧民・牧者・兵士・巡礼者などが用いる、移動可能な一時的な宿泊設備・天幕」を意味します(ヘブ11:9)。
 次にA「移動可能な聖所としての幕屋」の意味にもなります。モーセが建てた「幕屋」は天にあるものの写しにすぎません(ヘブ8:5)。
 次にB「エルサレムの神殿」を指すこともできます(ヘブ13:10)。
 次にC特に「至聖所を含む幕屋の部屋」のこともあります(ヘブ9:2―8)。
 次にD「偶像を運ぶための容器・御輿」を指します(使7:43)。
 次にE「神が住む天の住まい」のことです(黙13:6)。
 次にF複数形で「義人が住むことになる永遠の住まい」をも指します(ルカ16:9)。
 最後にG「支配者の血統・王朝」を意味します(使15:16)。
 今週の福音では、ペトロが目にした神的な栄光をとどめるための「住まい」の意味だと思われます。



 

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