A年年間第28主日
主はこの山で祝宴を開き必要なものをすべて満たし婚宴は客でいっぱいになった

第一朗読
イザヤ書 25章6―10a節

6 万軍の主はこの山で祝宴を開き
   すべての民に良い肉と古い酒を供される。
   それは脂肪に富む良い肉とえり抜きの酒。
7 主はこの山で
   すべての民の顔を包んでいた布と
   すべての国を覆っていた布を滅ぼし
8 死を永久に滅ぼしてくださる。
   主なる神は、すべての顔から涙をぬぐい
   御自分の民の恥を
  地上からぬぐい去ってくださる。
   これは主が語られたことである。
9 その日には、人は言う。
   見よ、この方こそわたしたちの神。
   わたしたちは待ち望んでいた。
   この方がわたしたちを救ってくださる。
   この方こそわたしたちが待ち望んでいた主。
   その救いを祝って喜び躍ろう。
10a 主の御手はこの山の上にとどまる。
第一朗読 
イザヤ書 25章6―10a節

   宴会・ミシュテ

 この語は動詞シャーター〈飲む〉から派生した名詞形ですから、「飲み物」の意味にもなりますが(エズ3:7)、その用例は5例にすぎません。なお、この語の全用例は46回ですが、そのうち20回はエステル記での用例になります。
 この5例以外は、「(飲み物が供されることになる)祝宴・酒宴」の意味で使われています。ナバルは家で王の「宴会」にも似た「宴会」を開き、かなり酔ってしまいました(サム上25:36)。ペルシャの王クセルクセスはユダヤ人の娘エステルを王妃に迎え、盛大な「酒宴」を催し、大臣、家臣をことごとく招いた(エス2:18)。アブラハムはイサクの乳離れの日に盛大な「祝宴」を開いた(創21:8)。ファラオは自分の誕生日に家来たちを皆、招いて「祝宴」を催した(創40:20)。ギブオンで夢から覚めたソロモンはエルサレムに帰り、主の契約の箱の前に立ち、いけにえをささげ、家臣のすべてを招いて「宴」を張った(王上3:15)。
 このように、人は喜ばしい出来事に出会うと「祝宴」を開きますが、今週の朗読では神がすべての民を招いて催す特別な「宴会」を表しています。
 

 

第二朗読
フィリピの信徒への手紙 4章12―14、19―20節

 12 貧しく暮らすすべも、豊かに暮らすすべも知っています。満腹していても、空腹であっても、物が有り余っていても不足していても、いついかなる場合にも対処する秘訣を授かっています。
  13 わたしを強めてくださる方のお陰で、わたしにはすべてが可能です。
  14 それにしても、あなたがたは、よくわたしと苦しみを共にしてくれました。
 19 わたしの神は、御自分の栄光の富に応じて、キリスト・イエスによって、あなたがたに必要なものをすべて満たしてくださいます。
  20 わたしたちの父である神に、栄光が世々限りなくありますように、アーメン。
第二朗読 
フィリピの信徒への手紙 4章12―14、19―20節

   必要なもの・クレイアー

 まず、この語は「必要、必然」を意味します。新約聖書での用例の多くは、「動詞エコー〈持つ〉+クレイアー〈必要〉」という用法で、この言い回しは「必要とする」を意味します。医者を「必要」とするのは、丈夫な人ではなく病人であり(マコ2:17)、天の父は願う前から、「必要」なものをご存じです(マタ6:8)。
 次に、「困窮、欠乏、困難」を意味します。信者たちは財産や持ち物を売り、おのおのの「必要」に応じて、皆が分け合いました(使2:45)。
 また、「欠けているがゆえに必要なもの」を意味します。教会は他人を造り上げるのに役立つ言葉を「必要に応じて」語ることを求められます(エフェ4:29)。
 最後に、「役目、任務」の意味でも用いられます。日々の分配をめぐって苦情が出たとき、霊と知恵に満ちた七人にその「仕事」を任せました(使6:3)。
 フィリピの教会はテサロニケで宣教するパウロの「窮乏」のために贈り物を送り(4:16)、彼らに「必要なもの」をパウロの神は満たします。パウロの困窮は、神から与えられた務めを果たすために引き受けているものだからです。
 

 

今週の福音
マタイによる福音書 22章1―14節

 1 イエスは、また、たとえを用いて語られた。
  2「天の国は、ある王が王子のために婚宴を催したのに似ている。
  3 王は家来たちを送り、婚宴に招いておいた人々を呼ばせたが、来ようとしなかった。
  4 そこでまた、次のように言って、別の家来たちを使いに出した。『招いておいた人々にこう言いなさい。「食事の用意が整いました。牛や肥えた家畜を屠って、すっかり用意ができています。さあ、婚宴においでください。」』
  5 しかし、人々はそれを無視し、一人は畑に、一人は商売に出かけ、
  6 また、他の人々は王の家来たちを捕まえて乱暴し、殺してしまった。
  7 そこで、王は怒り、軍隊を送って、この人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。
  8 そして、家来たちに言った。『婚宴の用意はできているが、招いておいた人々は、ふさわしくなかった。
  9 だから、町の大通りに出て、見かけた者はだれでも婚宴に連れて来なさい。』
  10 そこで、家来たちは通りに出て行き、見かけた人は善人も悪人も皆集めて来たので、婚宴は客でいっぱいになった
  11 王が客を見ようと入って来ると、婚礼の礼服を着ていない者が一人いた。
  12 王は、『友よ、どうして礼服を着ないでここに入って来たのか』と言った。この者が黙っていると、
  13 王は側近の者たちに言った。『この男の手足を縛って、外の暗闇にほうり出せ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。』
  14 招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない。」
今週の福音 
マタイによる福音書 22章1―14節

   婚宴・ガモス

 この語は動詞ガメオー〈結婚する・夫婦になる〉と同根の名詞であり、次のように使われます。
 まず@「結婚」を意味します。すべての人は「結婚」を尊ぶべきであり、みだらな者や姦淫する者を神は裁きます(ヘブ13:4)。
 しかし、@の用例は1例にすぎず、他はA「婚礼・婚宴」の意味です。新約聖書での婚宴のイメージは、神による救いへの招きとその救いにあずかる人間の喜びを表すために使われます。油を用意していた賢い乙女は花婿と一緒に「婚宴の席」に着くことができました(マタ25:10)。終りの時には、小羊の「婚礼の日」が来ますが、その「婚宴」に招かれた者は幸いです(黙19:7・9)。イエスが水をぶどう酒に変え、最初のしるしを行ったのはカナの「婚礼」でした(ヨハ2:1・2)。
 今週の福音でも「婚宴」の意味で、8回も使われています(ちなみに、この語の新約聖書での全用例は16回)。しかし、婚宴との関連が薄れ、「祝宴」に近い意味のこともあります(ルカ12:36、14:8)。



 

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